理事長挨拶

波多野 悦朗

 この度、9年間に渡り理事長を務めてこられました上本伸二先生の後任として、2025年10月1日付で日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)理事長を拝命致しましたのでご挨拶申し上げます。
 JNETSは神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm: NEN)に関心を持つ消化器内科医、消化器外科医、病理医、内分泌内科医、内分泌外科医、腫瘍内科医、呼吸器外科医、放射線診断医、放射線治療医など多領域の医師が結集し、今村正之京都大学名誉教授を理事長として2012年9月23日に設立されました。2015年にはガイドライン初版を発刊し、2019年には第2版、そしてこの度2025年に第3版発刊の運びとなりました。この間NEN診療を取り巻く環境は劇的に変化しており、とりわけ177Lu-DOTATATE(ルタテラ®)を用いたペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)は2021年に我が国でも保険適応となり、まさにNEN診療におけるブレイクスルーとなりました。一方で、多様化・複雑化していくNEN診療において、病態に応じた治療戦略の最適解は未解決課題となっています。

 そこで、JNETSが掲げるミッションは以下の3つです。

①世界標準のNEN診療の普及
海外で承認された治療薬・検査薬が我が国では未承認であるドラッグ・ラグ問題があり、患者さんにとって大きな不利益となっています。JNETSは世界標準のNEN診療を我が国でも普及すべく、ドラッグ・ラグ問題解消に向けて関連学会・患者団体と連携して働きかけを行なってまいります。

②我が国の実情に応じたエビデンスの創出・発信
一方で、人種差や診療体制の相違等により、海外のエビデンスが必ずしもそのまま我が国にも外挿できるわけではありません。我が国の実情に応じたエビデンスを創出・発信すべく、プロジェクト研究やNETレジストリを用いたアウトカム研究を積極的に推進し、またエビデンスの蓄積に応じた適切なタイミングでガイドラインを改訂してまいります。

③疾患認知度向上のための啓発活動の強化
NENは希少疾患であるため、一般臨床医や患者さんにNEN診療に関わる精度の高い情報が十分に行き渡っているとは言えません。毎年の学術集会および市民公開講座の開催、本ホームページ、SNSを通して積極的に情報を発信し、NEN診療の均てん化、患者さんへの啓発活動を強化してまいります。

 会員の皆様におかれましては、NEN診療の充実に向けご支援賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

2025年10月1日
日本神経内分泌腫瘍研究会
  理事長 波多野 悦朗